本実証研究では、生成AIとICTを活用して児童生徒の英語スピーキング力の向上を図るとともに、
教師の指導を支援することを目的としています。
AIと教師の役割分担を明確にし、より深い学びにつながる授業づくりを進めています。
自分の発音が伝わらず、聞き間違えられるのは大変だったけど、何度もやるうちに英語の速さに慣れ、聞き取れるようになりました。最後にアドバイスをもらえるのが嬉しくて、「次はもっとうまく話そう」と前向きになれました。
AIの声が怖かったり聞き取りにくい時もあるので、もっと明るい声でゆっくり話してほしいです。でも、苦手な発音を正確に指摘してくれるのがよかったです。自分の直すべきところが分かり、勉強になりました。
AIの活用で、内気な子も自ら伝えようと懸命に練習していました。対面では難しい「一人ひとりの練習時間」を十分に確保できる点が魅力です。今後は子供がもどかしさを感じないよう、よりスムーズに声を認識し、英会話ができることを期待しています。
生成AIの導入前と導入後に、AIによるスピーキングテストを実施しました。
Pronunciationでは小中学校ともにA1レベルに集中し、基礎的な発音が一定程度定着している一方で、Fluencyでは小中学校でA2以上に過半数が集中しており、発音と流暢さに乖離が見られた。また、Task achivementでは、A0の割合が多く、小中学校ともに学習内容の理解が不足している可能性がある。Overallでは、A2以上に達している学習者とA0にとどまる学習者がおり、学習者の間に大きな差がある。
AIを活用した英語スピーキング練習により、学習者全体の到達度に改善傾向が確認された。Overallでは、分布がA1からA2以上へ緩やかに上方移行し、集団全体の底上げが示唆される。項目別では、Pronunciationにおいて基礎の定着が見られ、Fluencyでは発話の不安定さが軽減し、英語で継続して話そうとする態度に変化が現れた。Task achievementにおいても、課題の意図を理解し発話に反映する力が育成されつつある。 総じて、AI導入は短期間で劇的な向上をもたらすものではないが、学習者を次のレベルへ着実に押し上げる効果がある。初期段階から一歩踏み出す支援として有効であり、今後も継続的な活用を通じて、学習成果が段階的に蓄積されていくことが期待される。
実践校3校の小学校6年生をオンラインで接続し、合同で英語学習を行いました。本時は、英語科「Who am I?」の単元のまとめとして、児童が互いにクイズを出し合う活動を通して、学習内容の定着と英語でのコミュニケーションを促しました。
事前学習では、Canvaを用いて、対象となる動物の特徴(色、好きなもの、身体的特徴など)を英語で表現するスライドを作成しました。クイズ活動では「Who am I?」の表現を中心に、スライドやヒントを組み合わせながら、自分の考えを積極的に英語で伝え合う姿が見られました。
少人数グループでの活動では、机の配置を工夫することで、オンライン環境下でも児童同士が助け合い、円滑に活動に取り組む様子が見られました。また、離れた友達への拍手やサムズアップなどの温かいリアクションも交わされ、相互の関わりを大切にする姿勢が確認できました。


AI英会話アプリを活用し、生徒一人ひとりのレベルに応じたスピーキング練習を行いました。生徒は自身の英語能力に応じて設定したレベルでAIと対話を行い、無理のない範囲でより多くの発話の機会を確保しました。
AIは生徒の発話内容や流暢さに応じて応答を変化させるため、英語が苦手な生徒は安心して話し始められる環境を、より習熟した生徒には思考を伴うやり取りを提供している点が特徴的でした。
授業中は、ALTや教科担任が教室内を巡回し、AIとのやり取りの様子を確認しながら、発音やイントネーション、表現の選び方などについて必要に応じた個別指導を行いました。AI任せにするのではなく、人による即時的な助言を組み合わせることで、学習の質を高めることができました。


ICTやAIを活用し、学習者が英語を「使う」場面を重視した多様なスピーキング活動を行いました。事前学習ではCanva等を用いて英語表現を可視化し、発話への不安を軽減させました。授業では他校とのオンライン交流やAIとの対話を通じ、各々のレベルで楽しみながら発話量を増やすことができました。 教員やALTの机間指導により、発音や表現への助言など個別のサポートを徹底することで、児童生徒のやる気や自信につながりました。AIの即時フィードバックと人によるきめ細かな指導を組み合わせることで、学びの質をより高めることができています。また、AIが蓄積したデータをもとに、個に応じた励ましや事後の振り返りの促進につながるものと期待できます。
実践校で実施しているAI英語スピーキング事業をさらに発展させるためには、何よりも教員の英語スピーキング指導に関する専門性を一層高めていくことが重要な課題となっています。AIは児童生徒に多様な発話機会を提供し、個別最適な練習を可能にしますが、その成果を確実に学びへとつなげるためには、教師自身が英語音声の特徴や発話指導のポイント、AIフィードバックの正確な読み取り方などを十分に理解していることが求められます。AIが提示するコメントは便利である一方、誤りを含む場合もあるため、教師が内容を吟味し、学習者の成長を正しい方向へ導ける指導力を備える必要があります。
また、児童生徒がAI相手の練習だけに偏らないよう、教員が対面でのスピーキング活動を適切に組み合わせ、相互作用的な学びを設計する力も不可欠です。AIで培った技能を実際のコミュニケーション場面で活かすためには、授業デザイン、発話の評価基準、口頭表現を引き出す問いづくりなど、教員側の専門的判断が学習の質を大きく左右します。したがって、研修の充実や授業研究の継続的な機会を確保し、英語科だけでなく全教員がスピーキング指導の基礎を共有できる体制づくりが求められます。
さらに、AI活用の効果を検証し指導改善につなげるための評価体制の整備や、端末・通信環境の安定化、保護者への丁寧な情報提供なども引き続き取り組むべき課題です。これらを着実に進めることで、AIと教員の専門性が相互に補完し合い、児童生徒にとってより実践的で深い英語学習を実現していきます。
※本事業は、文部科学省の令和6年度「小・中・高等学校を通じた英語教育強化事業」(AIの活用による英語教育強化事業)の委託を受けて実施されました。